男にも更年期障害がある

疲れやすい、睡眠障害や頭痛、ひどい肩こりがある、性欲がない……働き盛りの中高年男性で、こんな症状に悩む人は少なくない。しかし、「仕事が忙しいから」「ストレスや年齢のせいだろう」などと理由をつけて、仕方ないと我慢している人がかなりいるのではないだろうか。

実は、これらの症状は男性ホルモンが減少する更年期に差しかかったあたりで起きることが多い。

これまで「更年期障害」といえば女性特有の病気と考えられてきたが、男性にも更年期障害がある、というわけだ。この症状は更年期以降も続くため、最近では「加齢男性精線機能低下症候群(LOH症候群)」「男性ホルモン低下症候群」などとも呼ばれている。生活上のストレスによって症状がより強く出ることが多く、ストレス社会と呼ばれる最近の社会情勢のなかで、世間の注目を集め始めている。

注目睡眠障害
寝つきが悪い、熟睡できない、すぐに目が覚めてしまうなど、睡眠の量や質に何らかの異常がある状態のこと。
加齢男性精線機能低下症候群
加齢に伴い男性ホルモンが低下することによってさまざまな身体症状が現れる。血中の男性ホルモン量によって診断することができる。2007年、日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会により診療ガイドラインが作られた。

男性ホルモンの低下とストレスで発症する

仕事に追われる日々のなかで、自分の体のことにあまり目を向けようとせず、また弱音も吐きたくないのは世の男性の常である。この分野の第一人者で、更年期以降の男性におけるQOL(生活の質)障害の治療を長年手がけてきた都内メンズクリックの坂下医師(仮名)は、患者の傾向についてこう話す。

「気になる症状があっても『病院に行く暇がない』とガマンしてしまい、かなり重症化してからやっと奥さんやお子さんにうながされて来院するケースが目立ちます。欧米やアジア諸国でも同じようなことがあるようで、『中高年男性はよほどのことがないと医師のもとを訪れようとしない』というのは万国共通のようです」

男性更年期障害が疑われる症状は次の3つのパターンに分類できる。

①疲労感、睡眠障害、肩こり、頭痛、寝汗、顔のほてり、動悸などの「身体症状(自律神経失調症)」
②寝起きが悪い、気力がない、仕事に身が入らないなどの「精神神経症状
③早期勃起の消失(43ページコラム参照)、性欲減退、ED(勃起障害)などの「性機能低下」

こうした症状が出るのは50代~60代が多いが、40代でも身に覚えがある方は多いのではないだろうか。

もし以上のパータンに当てはまるようなら、男性更年期障害を疑ってみたほうがよい。質問は「心理的因子」「身体的因子」「性的因子」「排尿関連」の4区分に分かれているが、これらの症状には「男性ホルモン(テストステロン)の低下」と「生活上のストレス」の影響がかなりあると考えられる。

がっちりとした骨格やたくましい筋肉、低い声、外向的で活動的な性格、こうした男らしさを形づくるためには、男性ホルモンのはたらきが欠かせない。

男性ホルモンの低下が始まると、体力が落ち、男性としての活力が徐々になくなって柔和になるだけでなく、脳もストレスに対する抵抗性が低くなる。そして、「男性ホルモンの低下度」と「ストレスの強さ」の総和がある程度以上になると、前述のような症状が出てくるのである。もちろん、その限界点には個人差がかなりあるが、先の①から③に挙げたような症状がはっきり出てきたら、男性ホルモンレベルのチェックをはじめとした検査と治療を受けるべきである。

注目
自律神経失調症
自律神経を構成する交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、さまざまな症状が現れる。心理的・社会的ストレスが原因になることが多いといわれている。
テストステロン
精巣と副腎から分泌される男性ホルモンの一種で、精子の生成や性機能、毛深さ、低い声、筋肉の発達などの男性的な特徴を形づくる重要なホルモン。血液中では大部分がタンパクと結合しているが、1~3%は「遊離型テストステロン」として存在しており、これが男性の性機能に作用する。

50代まではうつ症状、60代は性機能低下が特徴

「男性も50歳を過ぎるころには生物としての明確なターニングポイントを迎えます。ただ、女性ホルモンの減退が更年期に一挙に起こる女性に対して、男性の場合、男性ホルモンの低下は個人でかなりバラツキがあります。しかも、ストレスが症状を悪化せさせることが多く、問題は男性のほうが複雑です」(坂下医師)

中高年の男性は仕事上責任ある地位にある上、家庭でも夫婦間の問題や親の介護など、さまざまなストレスを抱えていることも少なくない。若い世代では多少のストレスならはね返してしまう脳の活力があるが、男性ホルモンが低下し、体調が崩れ始める更年期には、脳もストレスに対する抵抗性が低くなるため、ストレスの精神的な面への影響がより強くなる。

40代後半から50代にかけては、この影響が反応性うつ状態という形で現れることが多い。一方、60歳を過ぎてくると、精神神経症状よりも、身体症状や性機能低下が強くなりやすい。

いずれにせよ、生物である男性も、50歳前後は車の車検期のように体にさまざまな問題を起こす可能性が高く、しっかりとした“体の車検”が必要になるということを覚えておきたい。ガマンしないで必要に応じて適切な治療を受け、老後に備えるべきである。

注目
女性ホルモンの減退
女性ホルモンのエストロゲンは、閉経前は卵巣のはたらきにより豊富に分泌されているが、閉経を迎えて卵巣の機能が低下すると急激に減少する。エストロゲンの減少は、女性の更年期障害の原因の一つ。
反応性うつ状態
大切な人との別れや人間関係の悩み、生活環境の変化、病気など、何か特定の原因をきっかけに起こるうつ状態のこと。抑うつ状態ともいう。不眠や食欲低下、疲労感、意欲低下などの症状が現れることが多い。

男性ホルモン低下は高血圧や糖尿病など「万病のもと」

男性ホルモンの検査は、血液検査の技術が確立したとこで、ここ10年ほどの間にかなり一般的になった。しかし、現在でも健康保険が使える検査は、一部の泌尿器科の病気に限られており、それ以外は自費になる。

ここで問題なのは、男性ホルモンの低下の影響は泌尿器系の病気だけに限らないことだ。最近では、男性ホルモンの低下が高血圧や動脈硬化、糖尿病などのメタボリックシンドロームの発症にかなり密接な関係があることも明らかになっている。男性ホルモンが低下することで、内臓脂肪がつきやすくなるためだ。また、心筋梗塞や認知症、骨粗しょう症など、体のあらゆる部分の病気との関連も指摘されている。

さらに、「テストステロンの低下が著しいと生存率が低い」というショッキングな報告も出てきている。中高年の健康を考える上で、もはや男性ホルモンの低下は無視できない状態になっているといってよい。「精巣から分泌されるテストステロンのチェックだけでなく、最近では副腎から分泌されるDHEAや成長ホルモン関連のIGF・1の測定も、生命力判断として強く求められるようになっていきます」(坂下医師)

坂下医師のもとでは、診療の際にまず血液検査でテストステロンとDHEAの量を測定し、同時に心理テストや質問紙でストレスをチェックする。場合によってはこれらのほかに、IGF-1や性腺刺激ホルモンであるLHなどの測定も行っているという。

注目
内臓脂肪
内臓の周りについた脂肪のこと。ホルモンの影響で男性や閉経後の女性がつきやすいといわれている。皮下脂肪に比べ、つきやすく落としやすいのが特徴。内臓脂肪型肥満は放っておくと高血圧や糖尿病などの生活習慣病につながりやすい。
骨粗しょう症
骨の密度が減少し、骨が折れやすくなる病気。加齢やカルシウム不足により発症しやすくなるほか、成長期にも起こることがある。特に高齢で大腿骨頚部(足の骨盤にもっとも近い部分)を骨折した場合、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくない。
DHEA
副腎で作られ、男性ホルモンや女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)などに変化するステロイド系ホルモン。別名マザー・ホルモンとも呼ばれる。
IGF-1
インスリン様成長因子・1。肝臓で成長ホルモンの分泌に応じて産生される。細胞分裂や細胞の成長を促進し、体の成長や健康の維持に重要な役割を果たす。
血液検査
坂下医師は、プロラクチン、LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、DHEA-S、エストラジオール、テストステロン、遊離型テストステロンの値を計測している。また、前立腺がんの腫瘍マーカー(がんの診断に用いる物質)である「PSA(前立腺特異抗原)」も同時に測定する。
LH
黄体化ホルモン。精巣の間細胞と呼ばれる特殊な細胞を刺激して男性ホルモンを分泌させるはたらきがある。

「朝勃ち」は男の生理、なくなったら男性ホルモン低下の「警戒警報」だ

男性ホルモンの低下は医師の検査を受けなければ確認できないが、自覚可能な目安に早朝勃起がある。俗にいう「朝勃ち」だ。

睡眠中でも、レム睡眠(体は深く眠っているが、脳は覚醒している浅い眠りの状態)のときには、内臓は副交感神経のはたらきに応じて活動している。それと同じように、内臓の一族である陰茎も勃起という形で活動しているのである。目覚める直前のレム睡眠時に起こる勃起が早朝勃起だ。

あまり知られていないが、この勃起は“男の生理”として、それこそ母親の胎内にいるときから起こっている。男性ホルモンが多くなるにつれてレム睡眠中の勃起時間は長くなり、男性ホルモンの多い20代なら、その割合は全睡眠時間の50%にも及ぶが、加齢による男性ホルモンの低下とともにその時間は徐々に減ってくる。このため、早朝勃起に気付かなくなっても「年のせいだから仕方ない」と変に納得してしまいがちだが、「勃起がなくなることは、陰茎の動脈硬化を示しているばかりでなく、全身の動脈硬化の早期サインともいえます」と坂下医師(本文で登場)は警告する。動脈の太さは、陰茎動脈で1~2㎜、心臓の冠動脈で2~4㎜、脳血管で8~9㎜。動脈硬化は血管の細い方から始まる。すべての人が必ずこうした経過をたどるわけではないが、勃起障害は心臓病や脳卒中につながる可能性がある。

「勃起障害があり、糖尿病や高血圧などのメタボリックシンドロームのある男性は、少なくとも心臓や脳の検査をしたほうがいいでしょう」(坂下医師)

男性の平均寿命が女性に比べて短いのは、50~80代の男性の死亡率が、同年代の女性に比べてかなり高いからだ。がんはもちろん、男性は心臓病や脳卒中による死亡も非常に多い。これは血管保護作用が女性ホルモンに比べて男性ホルモンはもともと弱い上に、男性ホルモンが低下することでさらに弱くなるためとされている。「男性ホルモン低下=勃起障害」にはかなり重要な医学的な問題が隠れているのである。

勃起回復治療では男性ホルモン補充療法に血管拡張薬のタダラフィル(製品名シアリス)の併用がかなり有効であることが分かっているが、「勃起障害の治療でも、シアリスなどを処方する前にまずマカやトンカットアリなどのサプリメントを」と坂下医師は呼びかける。

「日本の男性は、仮に元気になったとしても奥さんにそっぽを向かれていることが多い。これはこれで別の大きな問題があるわけですが、むしろ勃起力が回復したこと自体が、男性としての自信や自己尊厳を取り戻し、心理的にも活力ある生活を送れるようになる。それは残りの長い人生をより意義あるものにする上で、何ものにも代えがたいのではないでしょうか」(坂下医師)




サイト制作者紹介

都内在住のフリー医療ジャーナリスト
関西にある某大学薬学部卒
バツイチ 46歳
普段は週刊誌向けの記事やネット向けの記事を書く。身の回りに更年期障害に悩む人が多く、今回サイトの制作に携わる。
趣味は旧所巡り。

もしかしたら更年期障害かも

どうしてもの場合はED治療薬に頼るのも一法です




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